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インタビューVol.1「賛否両論」笠原 将弘氏

2020.11.06

作り手から、使い手へ、人の手を介して伝えられていく器。
器を通じて出会った『日本料理 賛否両論』店主 笠原将弘氏と語る

料理と料理人の『腕』を引き立てる器

「勝負下着」
器をそう例えるのは、賛否両論店主笠原将弘氏。東京・名古屋・金沢に和食料理店を構える。予約の取れない和食の名店として、言わずと知れた【日本料理 賛否両論】の店主である。

「いい器を使っていると、こちらも強気でいられる。常に勝負下着でいたいよね。何が起きるかわからないから。」と茶目っ気たっぷりに語る。
器選びには、店主のこだわりやセンスが表れる。
お客様からも評判で「どこの器ですか?」と尋ねられることが多いという。

賛否両論名古屋店 料理長丹下陽介氏もお気に入りの土鍋。お米一粒一粒が立ち、ふっくらピカピカに炊き上がるという。

https://yamaroku806.base.shop/categories/2983470

一方、杉浦はお店へ何度も足を運び、あらゆる情報を収集し閃きとイメージを形にしていく。そうして出来上がった作品を「できちゃった!」と笠原氏に提案するのだという。

インスピレーションの『挑戦状』

笠原氏が興味を持ったという「珍味入れ」。

「東京のお店に器を届けてくれた時に、置いてったんですよ!
『こんなのができたんですけど』って(笑)。
まるで他人事のような、本当にね、確信犯なんですよ。『器の確信犯』と呼んでますよ。まるで『朝起きたらできてた』みたいな言い方で。そして、納品の度にまた違うものを一個置いてく。」

笠原氏は、杉浦の提案を楽しみにしていると語る。
想像だにしていない器の提案を『挑戦状』と受け止め、ハッとすることもあるという。杉浦の提案する器からインスピレーションを受け「これが乗ったらかっこいいな」「あれもいいな」と妄想することもある。その閃きを、杉浦がサイズや色、形、質感などデザインを試行錯誤の上、何度も見本を作り直して提案。賛否両論でしか出会うことのできない器が誕生する。

自身の好みの器をふんだんに使うことは、父親の焼き鳥屋を継いだ時からの夢だったと笠原氏は言う。自身のお店を構え、オリジナルの器を使えることを「よかった」と頬を緩ませる。

  • 大人気の「変わり醤油」や珍味用にと、「作っちゃった!」珍味入れ。
  • 巻物型の蓋物。「蓋を開けた時のお客様が驚く顔を妄想する。」と笠原氏。
  • 角皿。杉浦が初めて本店を訪れた際に受けたインスピレーションから。字体やサイズ感にもこだわり、賛否両論の世界観を表現した。

金箔を貼った蓋椀。金沢店のために作成。杉浦の「金沢で、この子(器)を使ってください!」という熱い『挑戦状』。

作り手から、使い手へ。人の手を介して伝えられていく器

「こんな料理によっていろんな器使うなんて、日本にしかないからさ。そういう面白さが伝わればいいなと思いますよね。」

 「新しいスタイルを確立したい」との想いで東京に店を構えたという笠原氏。日本中、世界中からいろいろな情報や食材が一堂に会する東京ならではの「東京の和食」スタイルである。
「器に関しても、昔からのクラシックな日本料理の良さがあるものも使いながら、都会的な、アバンギャルドなものも使いたい。料理も器も新しいスタイルを作っていきたい。みんなが真似したくなるような。」

 杉浦は、使い手の想いを作り手に伝えることこそが、自身の役割だと言う。
杉浦の作品づくりは、作り手に使い手のパーソナリティーを伝えることから始まる。
その人専用に器をプロデュースしていくためである。
 『誰が、どこで、どんな風に』使うのかを作り手と具体的なイメージを共有して形にしていく。使い手の「顔」が見えることによって、創作意欲が沸き、創意工夫が生まれ、いい循環ができる。
 また、作品を納品したあとも「お嫁に出した子たち」がどう使われているかを確認するためお店に足を運ぶ。「作り手」と「使い手」、人と人との対話の中に生まれる想いや閃きが、形になり、また新たな作品を産み出す。

「器は僕にとって本当にかわいい子ども。」と語る杉浦。器を「この子」と呼び、一つ一つのエピソードを語る。

今後も変わらず、そうした器にかかわる人々との話し合いを繰り返し、想いを形にしていく。出来上がった器の、その先の挑戦や感動が「お店の価値を高める」のである。